株式会社新環境経営研究所−NMR−

カンボウプラス株式会社様の研修紹介-製造業における環境配慮の本質と環境マネジメントのあり方-
カンボウプラス福井工場様の研修風景
新環境経営研究所 研修資料
(株)新環境経営研究所 代表取締役社長 小野木正人

NMR研修紹介

日時 2006年7月7日(金)
講師 (株)新環境経営研究所 小野木正人
主催 カンボウプラス株式会社 福井工場 様
企業紹介

カンボウプラス株式会社様は高い機能性を持つキャンパスの製造販売を行っています。同社はグリーン基本方針を掲げ、「行動指針」及び「行動計画」のもと、「環境のカンボウ」として環境への取り組みを積極的に行っています。

1月14日に実施された本社での研修に引き続き、今回、福井工場で同研修を行うことになりました。

福井工場では、1997年4月にISO9001を取得し、1998年12月にはISO14001を取得しておられます。環境への取り組みの一例としては「環境の4R」コンセプトのもと、地球温暖化防止対策及び省エネ、省資源や汚染防止などと環境負荷の低減に貢献する環境配慮型商品(エコ商品)の開発・提供を促進しています。

また、従業員への環境教育の一環として、福井工場には「ケナフ」が植えられています。「ケナフ」は生育中に多量の二酸化炭素を吸着するため、CO2削減に貢献する植物です。

詳しくはカンボウプラス株式会社様の「環境レポート」をご覧下さい。
同社では、年2回社員研修の一環として「環境研修」行っています。1月14日に行われた本社研修レポートに関してはこちらをご覧下さい。

1.【ワークショップ】環境クイズ

本社の研修同様、福井工場の皆様にも環境問題に関するクイズに挑戦していただきました。それによって日ごろ気づきにくい、ご自身の「エコ意識度」をチェックしていただきました。

「環境」の研修というと難しく思われがちですが、まず身近で、業務(製造業)と関連のある環境問題に目を向けていただくことによって、環境に対する意識の向上をさらに深めることがこのクイズの目的です。

福井工場では、既にISO14001を取得しており、環境への取り組み活動も行っているため、全体的に皆さん「エコ意識」が高いという印象を受けました。中には「南極の氷が全部溶けると何メートル海面が上昇するか?」という問題で、答えをピタリと言い当てる方もいらっしゃいました。

【クイズの例】
  「ISO14001:2004版に移行できなかった企業は、200社程度しかない」    ○か×か?

環境クイズ
     ↑ 環境クイズの様子

  

2.環境先進都市に学ぶ環境配慮
フライブルグの環境配慮
   ↑ フライブルクの写真紹介

   

ディスカッションの様子
   ↑ ディスカッションの様子

 

ドイツ・フライブルグ 環境先進国視察レポート
  詳しくはこちらをご覧下さい!

 

クイズの後は、環境先進都市ドイツ:フライブルクを例にとり、どのような環境配慮が行われているのかをご紹介しました。

例えば、スーパーマーケット。

【日本】ではたいていの生鮮食品はトレーに入っており、ラップがされています。また、お菓子などは小分けパックになっており、それらが1つのに入れられています。

一方、【フライブルク】では、上記のような包装はほとんどなく、ばら売り量り売りがされています。また、ヨーグルトやピクルスを買いに行くときはタッパを持参しなければなりません。

フライブルクでは、それが「常識」なのです。逆に、日本では、食品=包装されているのが「常識」です。しかし、その「常識」は適切なものでしょうか?環境先進国では、日本の過剰包装は「非常識」に当たります。そう考えると、包装するメリットとデメリットをもう一度考え直し、「常識」から抜け出す努力も必要になるでしょう。

今回の研修でも、「製品の梱包材は適切なのだろうか?」という疑問の声がありました。環境問題への取り組みとして、まずはそういった「気づき」が大きな一歩なのです。

その他にも、フライブルクには、ペットボトルデポジット制度(*1)やサッカースタジアムのソーラーシステム(*2)などがあります。両者とも、市民の協力による環境対策です。

デポジット制度に関しては、日本でも大分サッカー場(通称ビッグアイ)や横浜・F・マリノス「リユースカップ」(*3)という名で導入され、話題を集めています。また、今回のドイツ・サッカーワールドカップでは、有力スポンサーであるマクドナルドコカコーラの「ドリンクボール(サッカーボール型をしたプラスチック容器)」に対し、環境保護団体から、「容器が回収されずに捨てられ、ごみとなってしまうのではないか」という批判の声が上がったことでも話題になっています。

ここで、気をつけなければならないことは、リサイクルリユースの違いです。リサイクルは環境にいいことですが、そうでない場合もあることを認識しなければなりません。と言うのも、ペットボトルをリサイクルしようとすると、それを運搬するためにガソリンを大量に使用することになり、コストも3倍かかります。したがって、使用できるものは「リサイクル(再資源化)」ではなく、「リユース(再利用)」することが必要です。

3.ISO14001:2004 EMSの概要と重点ポイントの解説

上述のように、カンボウプラス株式会社福井工場様は既にISO14001を取得しているため、社内でPDCAが実施され、定期的に継続的改善のための見直しが行われています。

また、社内の「環境安全教育」はもちろん、社外へ環境影響を与える取り組みもされています。例えば、2002年度からは「環境レポート」を公表しています。これは自社だけでなく、会社間のプラスの(有益な)影響を及ぼすことにつながります。

さらに、光触媒(*4)や生分解性商品(*5)を開発することによって、環境に優しい商品を社会に提供し、社会貢献を目指すだけでなく、そういった視点を持った従業員を育てることも重視されています。

(株)新環境経営研究所 小野木正人
 ↑手振りを交えて話す小野木正人講師

4.VOC(揮発性有機化合物)の解説
VOC解説 
  ↑ VOCの解説中の様子

ここでは、VOCについての説明や、なぜVOCが環境に悪影響を与えるのかなどを解説しました。

VOC(Volatile Organic Compounds)とは、蒸発しやすく、大気中で気体となる有機化合物の総称で、代表的な物質としては、トルエンキシレン酢酸エチルなどが該当します。これらは塗料接着剤インクなどに溶剤として含まれています。

特に平成18年4月1日からはVOC排出規制(*6)が適用されるとともに、事業者の自主的な取り組みも求められています。法規制の対象となる施設は6施設あり、カンボウプラス様は「接着剤使用施設における使用後の乾燥・焼付施設」に該当します。

そして、事業者の義務として、
@排出基準の順守
A年2回の測定・記録の実施
B設置・使用・変更についての都道府県知事への届出
が課せられています。

カンボウプラス様は、VOC対策として、業界団体等とコミュニケーションを図り、ベスト・ミックス手法により効率的に対策等を講じ、排出抑制を進める予定にされています。

【→カンボウプラス「トップメッセージ」Q3 を参照】

5.CSR(企業の社会的責任)の解説

VOCに引き続き、CSR(Corporate Social Responsibility)の解説を行いました。

従来のCSRとは経済及び法令順守の責任を果たすことを指していましたが、現在のCSRはそれらに加え、よりレベルアップした社会貢献環境配慮を行い、情報公開対話を自主的に行うことが求められています。

と言っても、その行動の定義がないため、各社が独自に取り組み事項を決定する必要があります。その中には、「安全、環境に配慮した職場支援と従業員支援」も含まれます。

今回の研修で印象的だったことは、最後にご挨拶されたカンボウプラス代表取締役:柏田民夫社長の次の言葉です。

「皆さん(従業員の方々)の成長が会社の成長です」

この言葉通り、従業員の成長なくしては企業の社会的責任も果たせません。まずは段階を踏んでいき、順調に進んでいるとしても、会社の「宝」である従業員の教育に配慮することが成功への近道となるでしょう。

CSR解説
 
  ↑ CSR解説中の様子

6.質疑応答

Q1 日本と海外諸国との環境配慮の違いは何か?
Q2 ISO14001:2004年版に移行できなかった理由は?
Q3 海外諸国ではISOを取得した企業は社会的に評価されるのか?

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【用語集】

(*1) デポジット制度

容器入りの商品を売る際に、価格に一定金額を上乗せし、消費後、空容器を返却したとき、上乗せした金額が払い戻される制度。
(*2) ソーラーシステム 太陽の熱を利用して冷暖房や給湯を行うシステムのこと。
(*3) リユースカップ 容器を洗って繰り返し使えるカップのこと。日本でも、公共の場(サッカー場、ライブ会場など)で、広く使われるようになってきた。
(*4) 光触媒 光(紫外線)を受けて、化学反応を促進させる物質のこと。省エネで、空気や水などの環境浄化効果がある。
(*5) 生分解性商品 植物などを原料とし、使用後土に戻る素材で作られている商品。
(*6) VOC排出規制 浮遊粒子状物質対策、光化学オキシダント対策を目的として、2005年5月の大気汚染防止法改正で新たに盛り込まれた工場・事業場に対するVOCの規制制度。

株式会社新環境経営研究所 研究員 近江和代