1.監査の一般原則の解説 |
開会挨拶ならびに講師紹介の後、監査の一般原則について解説を行いました。
監査という言葉自体、「何か指摘をされる」「重箱の隅をつつかれる」といったマイナスのイメージを持たれるかもしれませんが、「監査」の目的はシステムの「改善」です。監査員は被監査側にそのようなイメージを与えないよう、「監査の目的」を再確認し、監査技術を習得する必要があります。
『「監査」の目的は「改善」である。』
また、監査員は「環境関連法規制の認識」を図らなければなりません。その際、法規制関連情報に関して、どこまで認識しなければならないのか、その範囲に悩む方も多いと思います。今回はこの法規制関連情報の範囲についても解説を行いました。その他、監査員は法規制に関して、マネジメントと登録簿を確認する必要があります。この確認の仕方については研修を進める中で、具体的に各様式集を参照しながら説明を行いました。
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↑ 内部環境監査員研修テキスト |
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2.監査における役割および環境監査手順の解説 |
環境監査の一般原則を解説した後、監査担当の組織および内部監査員の「役割」について説明しました。ここで重要なキーワードは「力量」です。力量とは実証された能力のことです。例えば、資格を持っているだけでは力量があるとは言えません。「潜在化」している能力を「顕在化」し、それを実証しなければなりません。監査員の皆様にとってはその実証の場が「内部監査」に該当するのです。
『内部監査員に必要な力とは「能力」だけではなく、「力量」である。』
その後、「宇治市環境マネジメントマニュアル」を使用し、内部監査の概要および環境監査手順の解説を行いました。その際、「環境マネジメントマニュアル様式集」や「環境マネジメントシステム登録簿集」、各種手順書等を参照しながら、各段階(計画−準備−実施−報告)における手順や留意事項の説明を行いました。
その後、不適合と改善事項における「判断基準」について解説を行いました。ここで注意すべき点は、「不適合」および「改善事項」と判断する場合は必ず、記録確認+ヒアリングを組み合わせなければならないことです。
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3.ISO14001:2004の規格要求事項の解説 |
↑ 宇治市内部環境監査員養成セミナーの様子
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ここでは、ISO14001:2004のPDCAの流れと要求事項別重要ポイントについて解説を行いました。要求事項別重要ポイントに関しては、「体制および責任」「環境方針」「環境側面・法規制」等、全部で18の要求事項およびそれに対する具体的なヒアリング例をご紹介しました。
例) 【環境側面・法規制について】
「あなたの所属の著しい環境側面は何ですか?」
【記録の管理について】
「記録の保管方法を教えてください。」
「その記録を見せてください。」 |
ヒアリングにおいて、重要なキーワードは「仮説検証質問」です。実際に存在する事象だけではなく、「もし○○ならどうなりますか?」等という質問も織り交ぜることによって、緊急事態や不測の事態に備える環境を整えることができます。緊急事態は起きてからではどうしようもありません。緊急事態に対するヒアリングやテストがISOでは重要なポイントとなるのです。
『緊急事態に対する「仮説検証質問」を行うことが大切』
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4.宇治市の環境マネジメントシステムの概要 |
宇治市では平成14年の認証取得以来、環境に対する様々な取り組みを行っています。認証取得から4年が経過した現在、環境部門だけでなく、全庁的に取り組みを行っています。以下が同市の取り組み内容です。
@ 温暖化防止対策(オフィス活動など)
A 環境に配慮した公共事業の実施
B 環境に配慮したイベントの実施
C 環境改善に役立つ事業の推進 |
@の温暖化防止対策に関しては、『宇治市地球温暖化対策実行計画』に具体的な取り組み内容が記載されてありますので、こちらをご覧ください。
研修では@ABCの具体的な取り組みを洗い出し、そのチェック方法を学びました。
【温暖化防止対策におけるチェック方法の例】
統括推進者は「監視測定報告書」&「法規制順守状況記録票」で評価→ 環境管理責任者へ提出 |
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5.【ワークショップ1】 適合・不適合の判定 |
ワークショップ1ではケーススタディを行いました。各ケースは「内部監査の過程で発見された事項」です。受講者の方々にはそれらの事項に対して適合・不適合の判定を行っていただきました。ちなみに不適合の場合はISO14001のどの要求事項に関連するのかもあわせて考えていただきました。
このワークショップの目的は次の通りです。
・ 内部監査の過程で発見された事項について、関連する規格
条項を特定すること。
・ 監査結果の判定を行うことにより、規格条項の意味の理解を
深め、かつ監査人としてのセンスを習得すること。 |
初めて内部監査員になる方にとっては、このケーススタディを行うことにより「規格の読み込み練習」が可能であるだけでなく、監査に慣れることができます。また、何度か内部監査の経験がある方にとっては規格に対してより理解を深めることができます。
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↑ ケーススタディの様子 |
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6.監査技法の解説 |
↑ コーチングの手法を応用した監査技法の解説中
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監査技術が必要な項目は質問、文書・記録確認、観察等です。大切なことは、「口頭だけのやり取りで済ませない」ことです。つまり、目と耳で確認を行い、客観的な判断を行う必要があります。これには”Show me. Tell me.”(見て、聴いて)を活用すると効果的です。
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例)「今年度はどのような教育を実施されましたか?」→ Tell me.
「その記録を見せてください。」→ Show me.
『”Show me. Tell me.”を効果的に活用』
質問の技術に関しては、監査員にとって身に付けなければならない必須のテクニックです。講師の小野木は各団体や企業内でコーチング研修を行っており、そのスキルを内部監査員向けに応用しています。今回の研修では具体的な質問の仕方および注意点について詳しい解説を行いました。これは大きな枠で考えると、普段の業務に連動したコミュニケーション・スキルになります。
『質問のスキルは内部監査員にとって、必須のスキル』
その他に、チェックリストの活用も効果的です。チェックリストは事前に準備することによって、監査の効率性を高めることができます。また、監査の記録を残すことにより、監査証拠にもなります。つまりチェックリストは監査の質を向上させるためには必須と言って良いほど重要な「ツール」です。ただ、注意すべき点は、チェックリストに頼り過ぎないことです。目的は、監査員の「心証」を得ることおよび被監査員に「気づき」を与えることです。監査員はこれらの目的を見失わないよう、柔軟にチェックリストを活用する必要があります。
『チェックリストを効果的に活用』
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7.【ワークショップ2】 ヒアリング実務体験 |
このワークショップの目的は、内部監査員が監査チェックリストをもとにヒアリングを行い、監査の実務体験を通して監査技法を習得することです。
今回は、A課の監査を行うという前提のもとに、JISQ14001:2004および宇治市の既存の資料(マニュアル、様式集、登録簿、手順書等)とワークショップ用の環境記録を利用しました。今回はこれらの資料を活用しましたが、実際の監査では記録類を事前に確認することができないため、短時間でそれらを確認する訓練が必要です。
ワークショップの様子に関しては、多くの方が今回の研修で学んだスキルを活用されていました。Yes, Noで答えられる質問ではなく、発展性のある質問を中心にヒアリングを行い、ヒアリングだけで終わらせるのではなく、記録の確認も行なわれていました。その他に素晴らしいと感じた点は、監査員が被監査側に対し、「気づき」を生む問いかけをしていたことです。「今後、○○に関して、どのような努力をしていこうと考えていらっしゃいますか?」等という問いかけは、まさに環境配慮に対する「気づき」を生む「きっかけ」になります。監査員はそのような気づきを与えることも1つの役割だと言えます。
『被監査側に「改善」の「気づき」を与える監査を行う』
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↑ ヒアリング実務体験(模擬監査)の様子 |
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8.【ワークショップ3】 クロージング・ミーティング |
最後に監査結果のまとめを「内部監査結果要求/回答書」に記入し、その後グループ毎に発表を行いました。ここで注意すべき点は、「内部監査結果要求/回答書」はその場に立ちあっていない人も見ます。そのため、誰が見ても理解できるよう、具体的に記載する必要があります。例えば、宇治市の場合、報告書を見るのは市長です。今回の研修に出席していない市長でも指摘事項や改善事項内容について理解できるよう配慮しなければなりません。また、監査終了後に指摘事項が判明した場合は、監査報告会議前に被監査側と事実確認をした上で、指摘を行うよう留意することも必要です。
『理想の監査とは被監査部門の取り組み意識が向上する監査である。』
今後は、この研修で学ばれたことを実際の監査および実務に活かしていただき、『「歴史・文化」と「自然」を大切に、生活者の視点で創る環境都市 宇治』を実現していただければと思います。
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