株式会社新環境経営研究所−NMR−

見学会&レクチャー (株)堀場製作所のIMS・アサヒビールモルト(株)のEA21
株式会社堀場製作所見学
工場見学会バス車中の小野木正人
アサヒビールモルト株式会社

見学会紹介

日時 2006年8月10(木)
見学企業

ISO統合マネジメントシステム編 : 株式会社堀場製作所
エコアクション21編 : アサヒビールモルト株式会社

コーディネータ (株)新環境経営研究所 小野木正人  
主催 大阪府工業協会

見学会内容

1.【ミニレクチャー】ISO統合マネジメントシステムの概要解説

バス車中のレクチャーの様子 (講師:小野木正人)

 ↑バス車中のレクチャーの様子    


今回の工場見学バスツアーの車中では(株)新環境経営研究所小野木正人ISO統合マネジメントシステムおよびエコアクション21の特徴や最新動向などの解説を行いました。

まずはじめに、(株)堀場製作所到着までの道中、ISO統合化で成功するためのポイントについて解説しました。

講師の小野木は数多くの統合マネジメントシステムのコンサルティング経験や企業内外研修によって、どのような組織が成功し、またどのような組織が失敗するのか、という研究を行ってきました。2006年5月には(株)グローバルテクノ発行の『アイソムズ』の中でISO統合に関する特集が組まれ、「統合マネジメントシステム失敗・成功事例と改善方法」というテーマのもと、独自のチェックリストを考案しました。

まず、その中の内容やノウハウを参加者の皆様にお伝えし、(株)堀場製作所の工場見学に臨んでいただきました。


・ ISOの認証取得が目的ではなく、統一した経営方針、目的、目標を設定し、
  実行することが大切だと改めてわかった。そのためには、一般社員にまで
  この考え方を浸透させることが課題ということに共感した。
・ PDCAを廻すことが重要だと改めて認識した。
・ トップマネジメントの重要性を再認識した。
・ マニュアルと規定類を統合したが、これでよいのか判断に迷うことが多々
  あったが、会社に戻り、配布資料の特集記事(IMSのためのチェックリスト
  を読むと納得することばかりで驚いた。

2.株式会社堀場製作所見学

株式会社堀場製作所は、分析・計測機器メーカーとしてグローバルな展開を見せる中、1993年ISO90011997年ISO14001を取得されました。その後、OHSAS18001の登録に合わせ、「統合マネジメントシステム(IMS)」を導入しました。四半期ごとのPDCAサイクル導入トップマネジメントの強化などを施し、継続的な改善をしており、IMSの先駆的な企業として注目されています。

今回の見学を通して、印象的だった言葉があります。それは・・・

「ISOの認証を取得している、していないは関係ない。
マネジメントシステムを実際にやっているかどうかが問題である。」

この言葉を聴いて「はっと」した方も多いのではないでしょうか。
「ISOを取得することが目的ではない。マネジメントシステムを改善することが目的である。」ということは皆さんご存知のこと。しかし、実際はどうでしょう。いつの間にか、目的がISOを取得することになっていたり、運用とはかけ離れた作業に追われていませんか?この言葉をきかっけに、本来の目的は何なのか、もう一度考え直す必要があります。

また、(株)堀場製作所は内部監査員研修にも力を入れています。毎回新人のマネジャーが内部監査員として研修を受け、異なる部署の監査を行うことによって、新しい発見や改善点を見つけ、それを自部署で反映します。内部監査員研修とは監査をする側だけでなく、監査を受ける側の教育にもつながるのです。もっと言えば、従業員が問題意識を高めることにより、企業全体にプラスの効果が波及し相乗効果を得られます。

(株)堀場製作所では、それを超えて、WDI(*1)の取り組みも視野に入れています。WDIとは、組織の内部監査がきちんと運用されていれば、それが更新審査の一部に代えることができるという審査形式です。当社では内部監査員の質を上げ、企業の質をも向上させることが目的だということでした。

今回、IMSの先駆的な企業である(株)堀場製作所を見学でき、お話をお伺いすることによって、マネジメントシステムを効果的に「運用する」ことがいかに大切かを実感しました。
                  『 運用なくして、効果なし』


・ 経営者が「経営」の視点でIMSに参加している点が大変よかった。(4人)
・ IMSを実際に運用されており、WDIで考えておられる点が素晴らしい。
・ IMSを進めるとコストダウンにつながる面が興味深かった。
・ 接客態度に好感が持てた。
・ 識別表示の仕方が参考になった。(2人)
・ IMSの構築を予定していたので、「タイムリー」でかつ「なるほど」という
  納得感があり、とりあえずIMS構築に向けて一歩、踏み出すことができた。

株式会社堀場製作所

   ↑ 株式会社堀場製作所

3.【ミニレクチャー】エコアクション21の概要解説


エコアクション21について解説する小野木正人

↑ エコアクション21について解説
   する小野木正人


アサヒビールモルト株式会社到着まで、エコアクション21の特徴や取得状況、取得事例などの解説を行いました。

エコアクション21は、日本の環境省ISO14001の規格を参考に定めた国内のガイドラインであり、2006年8月8日時点で883件の取得企業があります。これはISO14001の20,780件(2006年6月末時点)と比較すると、認知度は低いですが、中小企業において、急速に普及・注目されています。

というのも、ISO14001と比べ、様式や基準が定められており、文書作成などの作業量が比較的少なく、審査・認証登録料も安価であることから、中小企業でも容易に取り組むことが可能だからです。

ただし、ISO14001とは違って、国際取引には通用しないので、国際取引を視野に入れている組織は注意しなければなりません。

アサヒビールモルト(株)がエコアクション21を取得する背景には、アサヒビールグループ全体で、ISO14001かエコアクション21のどちらかを取得しなければならなかったからだそうです。アサヒビールモルト(株)は従業員数50名以下で国際取引もないという理由からエコアクション21を選んだそうです。

4.アサヒビールモルト株式会社見学


アサヒビールモルト株式会社は、ビール用などの麦芽や麦茶、製パン・製菓用モルトフラワーを製造しています。自然の恵みである大麦を原料とするだけに、環境への配慮は積極的に行っています。2005年エコアクション21の認証を取得し、既に電力消費二酸化炭素排出排水量の大幅な削減廃棄物の管理においても大きな成果を出しています。今回はエコアクション21の取得活動や、運用状況について伺い、工場内の環境施設や生産施設を見学させていただきました。

今回は大麦の収穫時期の関係で機械はほとんど停止していたことが少し残念でしたが、それ以上に多くのことを収穫できました。

まずは、「5S」がしっかりできていること。「5S」とはご存知の通り、「整理・整頓・清掃・清潔・しつけ」という5つのSです。アサヒビールモルトで実際に行われていた5Sをご紹介いたします。

「整理」 ・ 現場には不要工具、不用品がない
「整頓」

・ 置場表示&工具管理がされている
(例:ハンマー→ボードに赤のマジックでハンマーの形が書かれているので、そこに保管する仕組みになっている)
・ 原料・製品用のパレットが綺麗に積み重なっている

 → 使ったものは元に戻す
 → 必要なものが必要なときに使用できる

「清掃」 ・ 床面の清掃が行われている
「清潔」 ・ 清潔さが保たれている
「しつけ」

・ 社長の1日2回のパトロール
・ 社員の皆さんの明るい挨拶

5Sに関しては、簡単なことのように思えて、実際は多くの企業が悩まされている問題だと思います。5S自体が現場ではめんどくさがられ、収益向上と結び付けにくいと考えられがちなことも1つの理由かもしれません。しかし、5Sがきちんとできていない企業では、予想外の事故不良品の増加納期遅れなどの様々な問題が生じることになります。

アサヒビールモルトで、見学者一同が驚くほど、しっかりした5Sを取り組んでいらっしゃる背景には、社長による「強く温かい」トップマネジメントがあるからだと実感しました。それは、1日2回のパトロールだけでなく、最後の女性職員さんのさわやかな商品説明でわかるように、社員の豊かな発想と、挑戦意欲を発揮できる企業風土を作り上げていることからも感じ取ることができました。

アサヒビールモルト(株)工場見学

 アサヒビールモルト(株)工場見学

アサヒビールモルト(株)工場見学

アサヒビールグループでは、全てのステークホルダー(*2)を「お客様」と位置づけており、その上で、企業の社会的責任であるCSRという言葉を

「CS (Customer Satisfaction) =お客様満足」
+「R (Relation) =交流」

と独自な視点で捉えています。つまり、お客様と積極的な交流を通じて、お客様の満足を得ることがアサヒビールモルトの社会的責任だということです。

私たちは、衛生的で安全な工場を見学することによって、非常に勉強になっただけでなく、社員の皆様の清々しいご対応を受け、まさに「満足」することができました。


・ 5Sという基本をしっかりやることの大切さを学んだ。(2)
・ 家庭的な雰囲気の中で成果を出している点が勉強になった。
・ お金をかけない、文書よりまず運用を大切にされており、非常に参考になった。
・ テプラやラミネート等での表示の仕方が参考になった。
・ トップダウンが明白であり、周知徹底されていた。
・ 社長の指摘で改善活動が着実に進んでいる。
・ 地に足をつけた取り組みを全員で推進されていることが感じ取れた。(2)
・ 分別・表示に対する各現場の工夫があった。
・ 社員の方々が清々しく、接客態度に好感が持てた。
・ 最後の麦茶のPRはGOOD!!

5.コーディネータによるまとめ

NMR小野木正人


まとめとして、コーディネータの小野木は上記のこと以外に、「内部監査」の重要性を挙げました。エコアクション21はISOと違って、内部監査は必須ではありません。にもかかわらず、アサヒビールモルト(株)を含む、アサヒビールグループは専門知識を持った従業員による内部監査を実施しています。

内部監査を行うことは、時間もかかり、面倒くさいかもしれませんが、それ以上の効果があることを知っていただきたいと思います。例えば、従業員全体の取り組みへの意識が高まるだけでなく、それまで気がつかなかった問題点や改善点が浮き彫りとなり、それは他部門へもプラスの効果を波及していきます。

また、内部監査を行うことは、「従業員教育」も兼ねることになります。内部監査は監査をする人にとっても、監査を受ける人にとっても、組織にとってもレベルアップが可能なのです。

 
・ ISO14001と比較することによって、エコアクション21の利点を理解できた。
・ 文書作成などより、「運用」をいかに上手くするかが実感できた。
・ 経営トップの関与が不可欠であることを改めて認識した。

NMR セミナー情報  NMR ISO研修   NMR お問い合わせ

【用語集】

(*1) WDI

「Well Development and Implemented System Audit」の略。WDI審査、代替審査と呼ばれている。組織が高いレベルの内部監査を行うことで、組織のマネジメントシステムの質を向上させることを目的としている。

(*2) ステークホルダー 企業の利害関係者のこと。
企業の利害関係者には株主、金融機関、研究機関、従業員、顧客、官公庁等規制機関、地域住民などが当てはまる。

株式会社新環境経営研究所 研究員 近江和代