株式会社新環境経営研究所

立命館大学公開講座特別企画「中小企業の経営革新セミナー」 大同生命保険株式会社創業100周年記念事業寄付講座 「個人情報保護と情報セキュリティの現状と企業対応手法」 - アンケート結果とチェックリストで知る企業対応のポイント −
(右)立命館大学大学院経営管理研究科教授 奥村陽一 (左)新環境経営研究所 小野木正人
研修テキスト
研修風景

研修紹介

日時

2006年7月8日・15日・22日・29日(すべて土曜日)

講師
(株)新環境経営研究所 小野木正人 (7月8日担当)
会場
立命館アカデメイア@大阪
対象
中小企業経営者・後援者および一般社会人の方
定員
80名
講座趣旨
立命館大学経営学部・大学院経営管理研究科大同生命保険株式会社の協力のもと、「中小企業の経営革新セミナー」を開講しました。この講座は大同生命保険株式会社の創業100周年記念事業の一環として、同社の主たるお客様である中小企業経営者の方々や社会人の方々を対象に、ビジネスに関する知識・スキルを習得する機会を提供する講座です。2006年7月8日は、(株)新環境経営研究所代表取締役であり、立命館大学大学院MBA(*1)修了、同大学MOT(*2)大学院博士課程後期課程在学中でもある小野木正人が「個人情報と情報セキュリティの現状と企業対応手法」というテーマのもと、講演を行いました。

研修内容

1.個人情報保護と情報セキュリティの現状

(株)新環境経営研究所代表取締役 小野木正人

最近になって、ようやく日本社会でも「個人情報」という言葉に注意が向けられるようになりました。新聞には「個人情報漏洩事件」という文字が躍り、テレビでは漏洩企業の責任者が頭を下げる映像を何度も目にするようになりました。

このように、私たちは、毎日の生活の中で「個人情報」問題に触れていますが、真の意味で「個人情報」を理解しているでしょうか?皆様は「プライバシー」「個人情報」の違いがお分かりでしょうか?また、企業の第三者認証である「Pマーク」「ISMS」の相違を説明できますか?

私たちは今、情報化社会で生活し、その情報の被害者になることもあれば、加害者になることもあります。「知らなかった」では済まされない世の中です。まずは、「個人情報」とは何か?について認識しておく必要があります。講座では、この点に関してから解説を行いました。

『「個人情報」とは何かを再確認する』

その後、最近の顧客情報及び個人情報流出・漏洩事件を洗い出していくことにより、情報セキュリティの重要性の認識を図りました。

ここで注意すべきことは、個人情報流出において、件数内容はほとんど関係ないことです。件数が少なくても、「個人情報が流出したという事実」が企業に大きな打撃を与えるのです。それに加え、顧客や取引先の信頼を失うことになります。また、信用回復にも多くの時間と費用がかかることも認識しておくことが必要です。

『個人情報を流出したという「事実」が企業に大きな打撃を与える』

2.個人情報保護対策のポイント

ここではまず、「個人情報保護法」について解説を行い、企業において、どんな情報が「個人情報」に含まれるのか、考えていただきました。

最近の顧客情報漏洩事件の影響もあり、「個人情報=顧客情報」だと思われがちですが、それ以外にも企業は様々な個人情報を保有しています。例えば、組織を支える「従業員」の情報はもちろん個人情報です。正社員だけでなく、契約社員パートアルバイトなどの情報も含まれることに注意しなければなりません。

『パート、アルバイトを含む「従業員」の情報は個人情報である』

従業員の個人情報の中には「健康診断関連情報」がありますが、これに関しては、個人情報に加えて、プライバシー情報機微な情報として、適正管理されなければなりません。

また、顧客の個人情報には名刺年賀状も含まれることを押さえておく必要があります。

『個人情報の洗い出しが必要』

研修風景@立命館アカデメイア

 

3.現状調査及びリスク対策の実務ポイント

MOT大学院博士課程後期課程在学中の小野木正人

組織が個人情報を保護するためには、やるべきことがあります。それは「リスク対策」です。今、このレポートを読んでいる皆さんの会社では、「個人情報調査」を行っているでしょうか?

会社が保有する情報のうち、どれが個人情報で、それらが何件あるか、どこに保管しているかなどの調査を行う必要があります。

『個人情報調査を行いましょう』

そして、調査が終われば、問題に対するリスク対策を講じ、役員を含めた全従業員にリスク教育を行う必要があります。個人情報漏洩事件のうち、約8割(セコム調べ)内部犯行だと言われています。つまり、社内の人間の誰かが情報を漏らす危険性があります。そうならないためにも、組織は十分な教育を従業員に実施しなければなりません。

『全従業員対象にリスク教育を実施することが重要』

4.プライバシーマークについて

「プライバシーマーク」とは個人情報保護に関する第三者機関による事業者認定制度です。組織はこれを取得することで、個人情報を適切に取り扱っていると証明されます。

ここでは、プライバシーマーク取得の必要性と2006年に改正が行われたJISQ15001のポイントを解説しました。JISQ15001とは個人情報保護の基準を定めたJIS規格です。よって、JISQ15001に合わせて対策を行うことで、個人情報保護のマネジメントシステムの向上が臨めます。

最近では、印刷会社の中でPマークを取得する企業が多くなっています。と言うのも、それが取引先との契約条件になっているためです。印刷会社は個人情報を取り扱うため、委託元はそれをリスクとして挙げざるを得ません。そのため、委託業者には個人情報を適切に扱っているという証明であるプライバシーマーク取得業者を選定するわけです。

『個人情報を適切に取り扱うためには、「プライバシーマーク」を取得することが効果的』

5.【演習】セキュリティチェックリストによる自己チェック

演習として、受講生の皆様に「個人情報保護&情報セキュリティの自己チェック」を行っていただきました。質問は25問あり、チェック後はセキュリティ評価を行い、自分のセキュリティ意識や行動を診断しました。

【For example... 】
・ 「パスワード付きスクリーンセーバーを設定していますか?

・ 「個人情報をメール送信する時は、添付ファイルにパスワード
  設定していますか?」(間違って送信しても、受信側がパスワード
  を入れないと開けない状態にするため)

・ 「個人のPCを社内に持ち込んでいませんか?」

・ 「個人情報をFAXする際には、他の社員に宛先等をチェックして
   もらっていますか?」

・ 「名刺、電話番号表、組織図は使用時以外は引き出し等に収納
   してありますか?」

このチェックリストによって、ご自身のセキュリティ意識を高めていただき、今後リスク対策として何をしていけばよいかの参考にしていただければよいと思います。

『自分のセキュリティ意識と行動をチェックしてみましょう』

自己チェック中

6.企業が実施すべき取り組み事項とは?

PマークISMSの審査機関であるJIPDECの調査を参考に、個人情報保護対策不正アクセス対策の実施状況について解説を行いました。

具体的な対策としては、以下のものが考えられます。

・ 委託先管理
・ 従業員教育
・ 情報操作の履歴管理(ログ取得
・ セキュリティエリアへの入退室管理
・ PCや外部記憶媒体の持込、持出禁止
・ 個人情報へのアクセス制限など

『個人情報保護対策および不正アクセス対策を行う』

また、上記以外にも、従業員と情報セキュリティに関する誓約書または覚書を交わすことが大切です。
多くの情報流出事件は内部犯行だという事実を認識しなければ、企業としては死活問題となるでしょう。

逆に、従業員の個人情報も保護しなければなりません。組織にとって、従業員の個人情報取得に関する同意書も提出してもらう仕組みづくりが必要となります。

『組織の情報はもちろん、従業員の情報も保護しなければならない』

7.情報セキュリティガバナンスについて
(株)新環境経営研究所 小野木正人

「情報セキュリティガバナンス」とは、「企業がIT事故について自身の被害の局限化という観点に止まらず、コンプライアンスの確保や、IT社会の一員としての社会的責任を果たすという観点から、情報セキュリティを適正なレベルで確保する構造」と、情報セキュリティ総合戦略策定研究会は定義しています。

つまり、個人情報漏洩などの問題は「企業内の責任」という考えではなく、「社会的責任(CSR)」(*3)にまで発展するという考えです。

これはISO26000としてISO化されることも予定されています。ISO26000とは企業や組織の社会的責任(CSR)に関する規格です。

このような社会的な動きに合わせて、組織は個人情報を保護することはもちろん、社会的責任も果たすことが重要になってくるでしょう。

『組織は個人情報を保護し、社会的責任を担うことが重要』

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【用語集】

(*1) MBA

MBAとは、Master of Business Administrationの略語であり、「経営学修士」のことです。

(*2) MOT MOTとはManagement of Technologyの略語であり、「技術経営」と訳されます。立命館大学MOT大学院によると、「MBAは製品やサービスができてからの経営戦略を扱うのに対して、MOTはそれらができるまでの戦略やイノベーションをいかにして効果的に生み出すかを学びます。」立命館のMOT大学院では、「テクノロジーを戦略的にマネジメントしてイノベーションを創出できる人材を育成」しています。
(*3) 社会的責任(CSR) CSRとはCorporate Social Responsibilityの略であり、「企業が社会の一員として存続するために,社会的公正や環境への配慮を活動のプロセスに組み込む責任のことをさしている。」 日経新聞『きょうのことば』

株式会社新環境経営研究所 研究員 近江和代